こんにちは。福岡県大川市にある桐里工房です。
桐と聞くと、「軽い木」「カビに強い木」 という印象を持つ方が多いかもしれません。しかし、なぜ軽いのか、どのように育つのか、木の内部には何が含まれているのかまでは、あまり知られていません。
桐が持つさまざまな性質は、細胞のつくりや内部を構成する成分と深く関係しています。
今回は、桐という木の基本情報から、軽さの理由、含まれる成分まで、順番にご紹介します。
桐とはどんな木?
桐の学名は「Paulownia tomentosa」といい、植物分類ではシソ目・キリ科・キリ属に分類される落葉高木です。
日当たりの良い場所を好み、杉や檜に比べて成長が早く、15メートルほどの高さにまで育つとされています。
日本で古くから栽培されてきた「桐」の中にも、いくつかの系統があります。代表的なものが「ニホンギリ」と「ウスバギリ」で、花の色や大きさに幅があります。
また産地によっても呼び名が変わり、青森県や岩手県で育った桐は「南部桐」、福島県会津地方のものは「会津桐」と呼ばれ、それぞれ木目の詰まり方や質感に違いがあるとされています。同じ「桐」といっても、栽培地や系統によって表情が異なるのも、桐の面白いところです。
なお、「〇〇ギリ」と名の付く木は他にもいろいろありますが、実はキリとはまったくの別種であることがほとんどです。キリと同じキリ科の近縁種は世界でも9種ほどしか知られておらず、日本には他に分布していません。たとえば「アオギリ」はアオイ科の木で、キリとは縁もゆかりもない別種です。実際、中国の古い書物には鳳凰がとまる木として梧桐(アオギリ)が登場しますが、これがキリと混同され、そのまま「キリ=縁起の良い木」というイメージが広まったともいわれています。
他の木と比べてわかる、桐の圧倒的な軽さ
桐材の最大の特徴は、なんといっても軽さです。桐の比重はおよそ0.3前後とされ、これは日本の木材の中でも最も軽い部類に入ります。
✅ 桐:約0.3
✅ 杉:約0.4
✅ 檜(ヒノキ):約0.4〜0.45
✅ ケヤキ:約0.6〜0.7
つまり桐は、建材としてよく使われる杉や檜と比べても3割ほど軽く、ケヤキのような堅木と比べるとおよそ半分の重さしかありません。
片手で持ち上げたときに軽いと驚くのは、この差があるからです。 この軽さの正体は、木材内部の構造にあります。桐材は細胞壁の占める割合が小さく、空気を含む空間が多い低密度の木材です。伐採直後の桐には水分が多く含まれていますが、乾燥が進むにつれて水分の抜けた空間に空気が入り込み、軽さが際立っていきます。
桐が「カビに強い」といわれる理由
桐材には、タンニン・セサミン・パウロニンといった成分が含まれており、これらには抗菌性や防虫性に関わる働きがあるとされています。調湿の働きに加えてこうした抗菌・防腐の成分が組み合わさることで、カビの繁殖を抑える効果が生まれていると考えられています。
断熱性・防火性にも優れる
桐材の空隙の多さは、熱を伝えにくい性質にもつながっています。
空気は熱を伝えにくいため、内部に多くの空気を含む桐材は木材の中でも熱伝導率が低いとされています。火が当たった場合も表面が炭化することで内部への延焼を抑えやすく、この性質を生かして古くから貴重な書類や金庫の内箱にも使われてきました。
桐と日本人の関わり、そしてその歴史
桐は日本の文化や制度の中で特別な位置づけを与えられてきた木でもあります。
✅ 弥生時代からの利用:桐材は弥生時代から使われており、静岡県の登呂遺跡からは桐で作られた琴が発掘されています。現在も桐材は、神社や寺院、宮廷の儀式で用いられる琴や箏として使われ続けています。
✅ 「娘が生まれたら桐を植える」風習:かつては女の子が生まれると庭に桐を植え、成長が早い桐が嫁入り道具の桐たんすになる頃には娘も嫁ぐ年齢になっている、という風習があったといわれています。
✅ 家紋としての桐:桐の葉と花をデザインした「桐紋」は、もともと天皇家にゆかりの深い紋章でした。歴史的には、天皇から政治を任される立場の家へ桐紋が与えられ、さらにその家臣へと下賜していく慣習があったとされています。この慣習の中で、天皇から直接与えられる格の高い「五七桐」に対し、家臣に与えられる際には格を一段下げた「五三桐」が使われるようになりました。足利将軍家や織田信長といった武家も桐紋を用いており、なかでも豊臣秀吉は桐紋を自らの家紋として使用したことで知られています。
✅ 現代にも息づく桐紋:この桐紋は現在も日本政府の紋章として受け継がれており、パスポートの表紙や内閣総理大臣官邸の紋章などに使われています。かつての500円硬貨にも桐のデザインが刻まれていました。
こうして見ると、桐は皇室や政府の紋章にも選ばれるほど格式のある木として、長い年月をかけて日本人の暮らしと結びついてきたことがわかります。
桐を知って、次の使い方へ
桐は、軽くて熱を伝えにくく、調湿性とカビ・虫への抵抗力を兼ね備え、さらに歴史的にも格式ある木として扱われてきました。こうした性質を理解して作られた桐たんすは、汚れや傷が出ても、削り直し・締め直し・埋木・金具交換などで長く使い続けることができます。
福岡県大川市にある桐里工房は、1912年に創業した桐たんすの製造工房です。
受け継いだ技法をもとに、手作業による製作と、古い桐たんすの修理・更生・リメイクに対応しています。 福岡市、北九州市、久留米市、佐賀市、武雄市、嬉野市周辺で、黒ずみや引き出しの不具合、金具の緩みなどに迷っている方は、処分する前に現在の状態をご相談ください。