職人が作る桐たんすには、木材選びから加工、仕上げまで、長年培われてきた専門的な技術が詰まっています。
桐里工房では、一人前の職人になるまでには最低でも10年以上の経験が必要だと考えています。
桐の特徴を理解し、一つひとつの工程に手をかけることで、大切なものを長く保存し、世代を超えて使える家具が生まれます。
この記事では、職人が作る桐たんすの特徴と、長く使い続けられる理由を解説します。
そもそもなぜ桐でたんすを作るのか?
桐たんすは、着物や衣類だけでなく、書物や掛物、工芸品など、大切なものを長期間保存するために使われてきました。
桐は軽く、湿度が高いと水分を吸って膨張し、乾燥すると収縮する調湿性を持つ木材です。
こうした性質を生かして精度の高いたんすに仕上げることで、湿気や害虫の影響を受けにくい収納環境につながります。
また、桐にはタンニンやキシリトールなどの成分が含まれており、防虫や消臭に関わる性質もあります。
さらに、内部に細かな空隙が多いため熱が伝わりにくいことも特徴です。
桐の着火点は約270℃、発火点は約425〜475℃です。
これに対し、杉の着火点は約180℃、発火点は約240〜250℃、欅(けやき)は約264℃という試験結果があります。
これらは試験機関で検査された数値です。
火にさらされると表面に炭化層ができ、内部への熱の進行を遅らせます。
桐そのものが燃えないわけではありませんが、こうした特徴も保存家具として用いられてきた背景にあります。
手仕事が生み出す引き出しの収まり
職人が作る桐たんすの違いが表れやすいのが、引き出しの収まりです。
製作時には何度も開け閉めをしながら、きつい部分を鉋(かんな)で少しずつ削って調整します。
すき間が大きすぎても、反対に詰めすぎても、使いやすい引き出しにはなりません。
木材の状態や季節による変化まで考えながら自然に開閉できる状態へ仕上げるには、長年の経験によって培われた職人の感覚と技術が必要です。
道具の手入れも職人の技術
桐を美しく加工するためには、鉋やノミ、ノコなどの道具の手入れも欠かせません。
柔らかい桐材は、刃物の状態によって加工面の仕上がりが左右されます。
そのため職人は日頃から刃を研ぎ、作業に適した状態に整えています。
完成したたんすからは見えにくい部分ですが、こうした積み重ねも美しい仕上がりを支えています。
木目と仕上げで生まれる表情
桐たんすは、使用する木材や仕上げ方によって異なる表情が生まれます。
前板には、まっすぐな木目が特徴の柾目(まさめ)だけでなく、山形や曲線状の木目が現れる板目(いため)を使うこともあります。
代表的な仕上げには、砥の粉仕上げと焼き仕上げがあります。
砥の粉仕上げは昔から一般的に用いられてきた伝統的な方法で、桐らしいやわらかな色合いと優美な存在感が親しまれてきました。
一方、焼き仕上げは近年増えてきた方法で、表面を焼くことで木目を際立たせ、深みのある表情に仕上げます。
どちらの場合も、最後にロウ引きを施すのが伝統的な方法です。
現在のような防水加工がなかった時代には、表面を保護する簡易的な防水処理としての役割もありました。
洗い直しや削り直しで蘇る
長年使った桐たんすには、引き出しの固さや表面の変色、キズ、汚れなどが現れることがあります。
状態に応じて洗い直しや削り直し、調整、補修を行い、穴がある場合には埋木(うめき)を施すことで、新品のように蘇らせることができます。
桐里工房では、ベニヤ板を使用していない天然木のたんすであれば、基本的に再生が可能です。
長く使って傷んだから終わりではなく、手を入れながら再び使えることも、桐たんすならではの魅力です。
受け継ぐ桐たんすの価値
桐たんすは、日常の衣類だけを収納する家具ではありません。
着物や書物、掛物、工芸品をはじめ、後世に残したい大切な財産を保存する家具としても受け継がれてきました。
桐は熱を伝えにくく、保存に適した特徴を持つことから、現代の金庫の内部にも桐材が使用されることがあります。
大切なものを長く守り、傷んだときには修理して再び使う。
そうした使い方ができることも、桐たんすが世代を超えて受け継がれてきた価値の一つです。
桐里工房では、桐たんすを「日本が世界に誇れる、世界一のたんす」という思いで作り続け、その技術を次の世代へ受け継いでいます。
福岡県大川市で1912年に創業し、100年以上受け継がれてきた技術をもとに、古い桐タンスや木製家具の修理・更生・リメイクにも対応しています。
福岡市、北九州市、久留米市をはじめ、佐賀市、武雄市、嬉野市周辺で、古い桐たんすの扱いに迷っている方は、ご相談いただけますと幸いです。